息をのむような耀変天目茶碗の美しさの再現に迫る!

耀変天目
『耀変天目(ようへんてんもく)』という大変に美しい茶碗が存在するのはご存知でしょうか?
以前、弊サイトでも取り上げたのですが、ここでは息をのむような美しさの再現と、それに尽力した人物をご紹介します。

息をのむような耀変天目茶碗の美しさの再現に迫る!

 

1.耀変天目とは?

天目茶碗のひとつで、12~13世紀に中国南部の福建省・建窯(けんよう)で焼成された茶碗です。鎌倉時代に中国から交易品として日本に伝わりました。

曜変というのは、もとは「窯変」「変容」を意味します。黒釉(こくゆう)地に、大小の斑紋が散在し、その周りが青銀色及び、虹色の美しい光沢を放つ。この斑紋が青く光り輝き、観るものを魅了します。
その美しさは星空に浮かぶ星座のようで、「星の瞬き」「星の輝き」を意味する「曜(耀)」の字が当てられるようになりました。
現在、世界で現存する曜変天目は3点で、すべて日本にて保管され、いずれも国宝に指定されているのです。

その制作方法は謎に包まれています。偶然作り出されたものではないかと噂されるほど、再現することは不可能とされ、日本のいや世界の至宝なのです。

 

2.発色の仕組み

曜変天目茶碗の夜の空のような青色は、釉薬の固有の色でなく、オパールや玉虫の羽のように、光の干渉によって現れる構造色とよばれる色です。曜変の青がなんとも神秘的なのは、光の当たり方によって発色を変えるからだと言われています。
陶器の色合いを出す上では、『釉薬(うわぐすり・ゆうやく)』が大変重要な役割を果たします。
釉薬というのは、陶磁器やホーローの表面を覆うガラス質の部分で、陶磁器などを製作する際、粘土などで成形された器の表面にかける薬品のことをいいます。 粘土や灰などを水に溶かした液体が用いられます。

耀変天目の美しい彩色や輝きは釉薬による部分が大きいとされますが、その成分や発現条件については正解が見つかっていません。
そもそも、当時の陶工がたまたま作り出した偶然性の高いものではないか?という説すらあるほどです。

 

3.耀変天目の再現者

この耀変天目、製造方法が現代に伝わることなく、今も謎のままです。
しかし、この美しさを再現すべく、多くの陶芸家が挑んできました。
瀬戸や美濃など古くからのやきものの産地では「曜変に手を出したら身上をつぶす」と警戒されるほど壁は高いのですが、追う者は後を絶ちません。
道半ば、自身の展覧会の直前に自ら人生を終わらせた陶工の方もいました。

それでも、耀変天目の美しさに魅せられた陶工たちはそれぞれ、長年の経験を元に推理を重ね、耀変天目に近づくことに成功した方もいます。

その中で代表的な方の名前を挙げると、

  • 長江惣吉さん(愛知)
  • 林恭助さん(岐阜)
  • 瀬戸毅己さん(神奈川)
  • 桶谷寧さん(京都)

上記4名の方が知られています。

中でも、林恭助さんは2001年に世界で最初に耀変天目の再現に成功した人物です。
そして、長江惣吉さんは親子2代に渡り耀変天目に取り組んできました。
このお二人はその耀変天目の製造法について公開しており、それぞれ違った手法で耀変天目の再現に近づいています。

長江さんは、製作された当時の福建省の環境をできる限り再現することで、特に小細工をすることなく再現しようと取り組んでいます。
一方、林さんはいったん漆黒の天目茶碗を焼いてから、模様を付けるためにもう一度焼くというアプローチを用いています。
この方法で林さんは、結果的に曜変天目の特徴である光彩を再現し、曜変天目の特徴を持った茶碗を作り上げ、その作品を発表するに至りました。
先を越された長江さんも林さんの報を受け、動揺したものの、やがて独自のアプローチにより光彩の再現に成功したのです。

 

4.耀変天目の再現に、さらなる重要なファクターが明らかに

耀変天目の正確な技法が発見されていない原因として、日本にある3つの碗が国宝に指定されているため、科学的分析ができないということがあります。土の状況や焼いた温度、それに曜変を起こしている部分の成分を把握できないのです。

しかしこの度、転機が訪れます。
2009年にに中国・杭州市の工事現場で曜変天目が出土し、2012年にそれが公表されたのです。
さらに、今回中国で発見された茶碗は、壊れた状態で発見されており、いくつかの陶片となって発見されたのです。
しかも、個人の発見であり、持ち主の了解を得られれば、化学分析も可能だろうと、日本の関係者が時間をかけてその持ち主と交渉をしました。その結果、了解がとれたと言うことで、一気に進展に向かいます。
この吉報を受け、長江宗吉さんや国宝の茶碗を所蔵している藤田美術館の館長である藤田 清氏や分析の関係者などが杭州に向かい、その持ち主から直接手渡された破片などを調査しました。

陶芸家である長江さんは手で触りながら壊れた断面を見て、焼成の温度やを使用している土などを推定できたようで、自分が用いている土と比較すると杭州の方がキラキラし、黒っぽいことが分かりました。
そこから推定される焼成温度は1300~1350℃と判明したのです。(これまでの定説では1250℃程度)

しかし、翌日に化学分析のために伺うと、日本にデータを持ち帰らせてはならいと中国政府の指示があったらしく、持ち主が拒否をしてしまうのです。
失意のまま帰国したメンバーではありますが、ここまできて諦めることはできません。日本国内でどうしても成分の分析をしたいと、国と交渉をし、藤田美術館が所蔵している茶碗で実行できることになりました。
現在の分析は非破壊分析が可能となっており、表面にX線を照射することで、元素の成分を判別できる装置を使用しました。

その結果、長江さんが製作しているものと比較すると、釉薬に鉛が含まれ、マンガンが非常に多いことが分かりました。
それにオーロラのように輝く光彩の部分には、塩素が含まれていることが分かったのです。

この結果を受け、長江さんが土や釉薬成分を調整して何度か試行錯誤したところ、今まで自身が作り出してきた耀変天目と比較して、より国宝の輝きに近いものができたそうです。

まだ製法の特定には至ってはいないものの、今回の取り組みによって当時の技法にかなり迫ることができたようです。

 

あとがき

ここまでの長文をお読み下さり、ありがとうございます。

国宝レベルの美しさの再現は、並大抵のものではありません。
人生をかけて耀変天目の美しさに挑む姿勢は、それ自体とても尊いものに映りました。
もう少しで、より多くの人たちが耀変天目の美しさを実物として見られる機会が増えるかもしれません。

彼らの努力が身を結ぶことを願わずにいられません。

以上、
息をのむような耀変天目茶碗の美しさの再現に迫る!」でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。