世界に4点しか存在しない耀変天目茶碗の神秘的美しさに迫る!

世界に4点しか存在しない耀変天目茶碗の神秘的美しさに迫る!

みなさまは、国宝『耀変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)』をご存知ですか?
本記事では、息を飲むような美しさを持つ、この国宝について掘り下げてまいります。

世界に4点しか存在しない耀変天目茶碗の神秘的美しさに迫る!

 

1.耀変天目茶碗とは

耀変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)とは、約800年前に中国南部の福建省の建窯(けんよう)で作られました。世界の陶芸史上でも最も美しく、そして最大の謎に包まれた幻の茶碗です。
この茶碗は、鎌倉時代に中国から交易品として日本に伝わりました。室町幕府の足利将軍家の宝物について記した巻物には、「この世にこれ以上のものはない」と最高の評価が与えられています。

「耀変」とは、元来「窯変」(ようへん=陶磁器を焼く際、窯の中で予期しない色に変わること)、や「容変」の言葉が当てられていましたが、その茶碗には黒釉(こくゆう=黒色のうわ薬)の下地に大小の瑠璃色あるいは虹色の光彩の斑紋(=まだら模様)が散在することから、「星」や「輝く」という意味の「耀」の字が用いられるようになったと言われています。

「天目」の語源については諸説ありますが、一般には、中国浙江省にある天目山の名に由来するとされています。現在では、黒いうわ薬のかかった茶碗を一般的に天目と呼んでいます。

 

2.この世に存在する4点について

耀変天目茶碗は約800年前に中国で生まれたのですが、現存するのが世界に4点のみです。しかも、その4点すべてが日本にあり、1点を除き、いずれも国宝に指定されています。

その4点は

  1. 静嘉堂文庫
  2. 藤田美術館
  3. 大徳寺龍光院
  4. 橋本 浩司様

で所蔵されています。

静嘉堂文庫

東京都世田谷区岡本にある専門図書館及び美術館で、ここには曜変天目茶碗の中でも最高の物とされる『稲葉天目』と名付けられたものが所蔵されています。
本記事のトップに貼られている画像が『稲葉天目』です。
元々、徳川将軍家の所蔵で、徳川家光が病に伏せる春日局に下賜したことから、その子孫である淀藩主稲葉家に伝わりました。
その後、1934年に三菱財閥総帥の岩崎小弥太が購入し入手したのですが、岩崎は「天下の名器を私如きが使うべきでない」として、生涯使うことはなかったそうです。

藤田美術館

藤田美術館所蔵
大阪市都島区網島町にある、東洋古美術を中心とした大阪府の登録博物館で、常設展示は行っておらず、春と秋に3か月ずつ企画展の形でのみ開館するのが特徴です。
ここで所蔵されているものは、水戸徳川家に伝えられたもので、曜変の斑紋が外側にも現れています。1918年に藤田財閥の藤田平太郎が入手し、現在に至ります。

大徳寺龍光院

曜変天目茶碗
京都府京都市北区紫野にある臨済宗の寺院。国宝・重要文化財の建物や美術品を多数有しているのですが、観光を目的とした拝観は一切受け付けておらず、特別公開の類も行っておりません。いわゆる拝観謝絶の寺院なのです。
そのため、こちらで所蔵されている耀変天目茶碗は世界で一番見るのが難しいということになります。
国宝とされる三椀の曜変天目茶碗のうち、最も地味なものではありますが、幽玄な美しさを持つとされて評価が高いそうです。

橋本浩司 様


4つ目の耀変天目茶碗は、2016年12月20日に放送されたテレビ東京系の鑑定番組で、その存在が明らかになりました。

現在、徳島県徳島市でラーメン店を営む橋本様の曽祖父で、腕利の大工てあった藤吉氏が戦国武将「三好長慶(みよしながよし)」の子孫の屋敷の移築を請け負った際に、大金を投じて買い取ったものの中に入っていたものです。
徳島では昭和20年7月4日に徳島大空襲があり、橋本藤吉氏が所有していた骨董品のほとんどは、それにより焼失してしまいました。
しかし、耀変天目茶碗は郊外の資材置き場に保管しっぱなしになっていたため、空襲の難を逃れ、今回の発見に至りました。
そして、番組内の鑑定にて間違いなく、『耀変天目茶碗』であるとされたのです。

この出来事は、当該番組の看板鑑定士の中島誠之助氏に「22年の番組史上最大の発見」と言わしめるものでした。

 

3.値段がつけられるなら

曜変天目茶碗はいずれも国宝に指定されているため、大変に高価であることは想像に難くありません。
もし値段をつけるなら、どのくらいの価値があるのでしょうか? 曜変天目茶碗の中でも最も美しい『稲葉天目』を例に挙げてみましょう。
この『稲葉天目』、すべての茶器、茶道具の中でも恐らく最高値の逸品で、大正7年に売買された時の価格は16万8千円。当時の1円は現代の約1万円ということなので、換算すると16億8千万円もの価値があるのです!

※参考:大正7年の労働者家庭の生活費は1か月28円、小学校教員初任給12-20円、日雇い労働者の賃金1日1円99銭。

なお、耀変天目に比べればワンランク下がると言われている『油滴天目茶碗』が、2016年にサザビーズ、クリスティーズという2大オークションサイトで一品ずつ出品されました。それぞれの落札額は、約1億5000万円(サザビーズ)、約12億円(クリスティーズ)でした。
このことから、もしも今、中国南宋時代に作られた世界に3点しかない美しい茶碗がオークションにかけられた場合には、新興国の超富裕層の人が金に糸目をつけないで落札にかかると考えられます。

オークションは競り合う相手がいて値段が上がるので、50億円は下らないでしょう。

なお、前章でも取り上げた橋本浩司様が所有する耀変天目茶碗は、2016年12月20日の放送で、その金額2千5百万円とされましたが、その希少価値、文化的価値からもっと高い値がつけられることは間違いないでしょう。
できることならば、日本のしかるべき機関で、現在所有されている方の不満がないように買い取りを行い、厳重に管理すべきかもしれません。

 

4.4つ目の耀変天目茶碗の真偽について


2016年12月20日にて放送されたTV番組で明らかになった橋本浩司様が所有する耀変天目茶碗について、異を唱える専門家が現れました。
以前にも弊サイトで『息をのむ様な耀変天目茶碗の美しさの再現に迫ります!』で取り上げた愛知県の長江惣吉さんがその指摘をした人物で、耀変天目の再現に心血を注いで取り組んでいらっしゃる方です。
長江氏は中国を28回も訪れ、現地研究者との交流を重ねて、耀変天目茶碗の再現に試行錯誤を重ねています。
2016年、NHKがその活動を番組で特集したほどの「曜変天目の専門家」です。

4つ目の耀変天目茶碗は、その方をして、「番組を見ていて思わず絶句しました。どう見ても中国の商店街で売っているまがい物にしか見えなかった」と言及されてしまっているのです。
その最大の根拠は「光彩」です。
曜変天目茶碗の最大の特徴は、茶碗の内側に広がる鮮やかな光彩であり、光の当たり具合、見る角度によって輝き方が多様に変化することです。
しかし、TV番組で紹介された茶碗は光によって変幻する光彩ではなく、単に赤、緑、青などの釉薬がそのまま発色したものに見え、「これは東洋的な味わいに欠ける」と長江氏は仰っています。さらに、光彩は茶碗の外側にも多く存在し、他の耀変天目茶碗とは異なる特徴を示しています。

また、中国陶磁考古学・陶磁史の世界的権威で沖縄県立芸術大学教授の森達也氏も「実物を見ていないのでその点は不正確ですが、映像を見た限りでは本物である可能性は低い」との見解を述べられています。

それに対し、問題の発端となったTV番組による回答は「鑑定結果は番組独自の見解によるもの、番組の制作過程を含め、この件についてお答えすることはありません」というものでした。

実物を見ていない段階なので、上記の意見が正しいとは言い切れないところですが、現在は非破壊分析が可能となっています。その表面にX線を照射することで、元素の成分を判別できる装置も存在し、藤田美術館にて所蔵している耀変天目もその検査をしています。
今回発見された耀変天目も、さまざまな角度から調査を行い、真偽を明確にしてほしいところです。

 

5.4つ目?の耀変天目茶碗の現在


現在、渦中にある4つ目の耀変天目茶碗は、件のTV番組の鑑定を受け、茶碗を文化財に指定するための調査を計画していました。
県の文化財保護条例に基づいて、持ち主である橋本浩司様に文化財の申請をする意向を確認していたのです。
その申請に対し、橋本様は当初は協力的であったのですが、しばらくして

  • 諸般の事情で資料を外部に出さないでもらいたい
  • この件は今後ノーコメントにします

という申し出があったため、調査の実施は白紙になってしまっています。

橋本様が耀変天目茶碗の存在を知っていて、鑑定番組に出品したのかは、知る術がありません。
もし、知らずにこの茶碗を鑑定に出したのだとしたら、TVによって真偽が曖昧なまま、橋本様の情報だけが広まってしまい、いらぬ指摘や非難、誘惑などが降りかかってしまっていることは想像に難くなく、お気持ちを思うと気の毒に感じます。

現時点では『4つ目の耀変天目茶碗』の真偽については、旗色が悪いようです。
しかしながら、筆者は最後の最後まで、本物であるとの期待を持ち続けてゆきたいと思っています。

 

あとがき

ここまでの長文をお読み下さり、ありがとうございます。

今回取り上げさせて頂いた『曜変天目茶碗』の輝きには、宇宙を思わせるような神秘的な美しさを讃えています。
日本の最高権力者の手を渡り歩いてきたとされ、その美しさの再現は現代に至るまで不可能でした。
しかし、近年になってようやく、曜変天目の再現が可能となってきました。
その技術は大変繊細なものなので、数多く出回ることは難しいと思われますが、この輝きを手にできる可能性が現実的になったことは大変に喜ばしい限りです。

以上、
「世界に4点しか存在しない耀変天目茶碗の神秘的美しさに迫る!」でした。
最後までおつきあい頂き、ありがとうございます。