熊谷正寿氏が宗教を手本に導入した組織長寿の仕組み

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熊谷正寿氏が代表を務めるGMOグループ(以下GMO)は、社員の結束の固さが有名です。それは、熊谷氏が宗教をお手本にした仕組みで、組織創りをしているためだと思われます。その具体的な方法をご紹介します。

熊谷正寿氏が宗教を手本に導入した組織長寿の仕組み

 

1.長続きする組織の仕組みを宗教に学ぶ

熊谷正寿氏は、起業する際に宗教を手本として会社組織の仕組みを創ろうとしました。熊谷氏は、既存の長く続いている組織やその仕組みを調べ、一番長寿なのは宗教組織だと気づいたのです。

帝国データバンクの調査では、会社組織は創業して5年後に7割以上が消えてしまうとか。ゼロから始めるベンチャーなら余計に、長続きする仕組みでスタートしたいと、熊谷氏は考えたのでしょう。

世界で一番長い歴史を持つ会社組織は、1400年もの間、日本の社寺建築に携わってきた「金剛組」です。この1400という数字も素晴らしいですが、宗教の場合、例えばキリスト教では2000年の歴史があります。他にも、1000年以上続いている宗教がいくつかあります。

 

2.宗教組織の仕組みを会社組織に導入する

熊谷氏によると、1000年以上続いている宗教組織には、以下の5つの共通項があります。熊谷氏はこの5つを導入することによって、長寿の会社組織を創ろうとしいます。

共通項 キリスト教の場合
同じものを読んだり歌ったりする 聖書を読み、聖歌を歌う
定期的に一つの場所に集まる 日曜日に教会でミサを行う
同じ形をとる 十字を切るなど
同じものを身につける 十字架を身につける
みんなが強く信じている神話がある イエスの復活など

 

これらの具体的な導入方法ですが、「同じものを読んだり歌ったりする」という項目について、GMOではまず「スピリットベンチャー宣言」を作り、唱和するということを行っています。

次に「定期的に一つの場所に集まる」という項目については、GMOの各グループ会社の社長や幹部が、毎週月曜日に集まって定例会議を行います。その際にも、もちろん「スピリットベンチャー宣言」を一番最初に唱和します。

この週に1度の定例会議は、それぞれに多忙な重鎮達が一堂に会する頻度として、非常に高いと思われます。けれども、熊谷氏が大切にする「全員で同じ方向を向いて事業を推進する」という目標のため、貴重な時間を割いて集まり、情報や事業への理解を共有するのです。

「同じ形をとる」という項目については「ナンバーワンポーズ」があります。これは、指を1本立てて前に突き出すというもので、どんな事業でも常にナンバーワンに目指すという熊谷氏とGMOの意志を表しています。

「同じものを身につける」という項目については、会社の徽章が配布されています。「みんなが強く信じている神話がある」という項目の「神話」は、熊谷氏が21歳で立てた「起業して上場する」という夢が15年でほぼ予定通りに叶ったことです。

 

3.スピリットベンチャー宣言とは?

スピリットベンチャー宣言は、いわばGMOの社訓です。熊谷氏によると、日本国内で100年以上の歴史を持つ会社の80%弱に、社是や社訓があるということです。 この宣言をGMOでは、全体会や各部署で「本気で」唱和しています。かなりのボリュームがあるので、形式的にさらっと読み流せるものではなく、全て読み終えるのに15分ほどかかります。 この宣言は以下の4つの要素から成り立っています。

  • 夢(人生を何に捧げるのか)
  • ビジョン(宝の山はどこにあるのか)
  • フィロソフィー(何の為に存在するのか)
  • 経営マインド(基本行動原理・原則)

中でも一番ボリュームのある「経営マインド」はさらに7項目に分かれており、それぞれ「前提」、「精神面」、「教養面」、「目標面」、「ノウハウ」、「可能性を信じよう」、「魅力あるヒトになろう」というタイトルが付けられています。

 

4.スピリットベンチャー宣言の内容

スピリットベンチャー宣言で一番重要なポイントの一つは、「幸せになろう、成功しよう」ということです。これは、21歳の熊谷氏がご自分の夢をリストアップした際に見つけた「幸せ」と「成功」の2つのキーワードが、そのまま盛り込まれたものです。

宣言では「幸せとは、心の平和、満足感、目標を達成した時の喜び」、「成功とは、物・心ともに豊かで、『笑顔』『感動』を産みだしながら、人生を全うすること」と定義しています。この「幸せ」と「成功」が宣言全体の基本であり、土台となっています。

そして「夢」の要素のトップに置かれているのが、熊谷氏とGMOの究極の夢であり目標である「インターネット事業でナンバーワンになる」ことです。「経営マインド」のトップには、この夢に加えて「”一番”になれないことはやらない」とまで書かれています。

この宣言でもう一つ重要なポイントは「笑顔」と「感動」です。
宣言には、我々は「インターネットを広め、多くの『笑顔』『感動』を産む」使命を背負っている、と書かれています。この「笑顔」と「感動」の結果として収益を上げることを、熊谷氏は目指しているのです。

 

5.5つの共通項導入の成果を見る

前述した、1000年以上続いている宗教の5つの共通項を熊谷式に導入した成果は、明白です。何よりもGMOは、前身である「株式会社ボイスメディア」の設立から、20年以上にわたってインターネット事業のトップを走り続けています。

宗教をお手本にした熊谷氏の組織創りには、カルトチックという批評もあるようです。けれども、ベンチャー企業が20年以上も生き残るということがどれほどすごいことかは、最初にご紹介した、5年後に7割以上が消えるという数字にも如実に表れています。

また、GMOが400億円の借金を抱えて黒字倒産の危機に陥った際、幹部社員たちは一人も会社を辞めることなく熊谷氏を支えました。これは熊谷氏と社員、また社員同士が頻繁にコミュニケーションしている賜物といえます。

そして、多くの社員がスピリットベンチャー宣言を常時読み返し、「幸せ」、「成功」、「笑顔」、「感動」というキーワードを行動規範としていること。このことが、全社で同じ方向を向いて事業を推進するという熊谷氏のポリシーに貢献し、GMOの発展に大きく寄与していることは間違いありません。

こうして熊谷正寿氏は、宗教をお手本にして、組織を長寿させる仕組みを確立したのです。

 

あとがき

ここまでの長文をお読み下さり、ありがとうございます。

宗教の場合は、カリスマ的指導者がリーダーシップを発揮して信者を引っ張っていくというスタイルになりがちです。けれども熊谷氏のGMOの場合は、人徳のある指導者のもと、周囲が自然に行動を起こすというスタイルです。熊谷氏はご自分でも「項羽と劉邦に例えるなら、私は劉邦タイプなんだと思います」とおっしゃっています。 人徳で組織を運営する熊谷正寿氏のスタイルもまた素晴らしいですね!

以上、「熊谷正寿氏が宗教を手本に導入した組織長寿の仕組み」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。