一日を長く柔軟に過ごす「夕」にまつわる諺7選

何かと寂しさを感じてしまいがちな夕刻。燃える夕陽に涙してしまうこともしばしばです。けれどもそれは寂しいからではありません。あまりに夕陽が美しいからです。秋を迎えていよいよ彩りを増す樹々のように、風にしないながら、年齢を重ねるごとに深い輝きを放つ諺(ことわざ)をご用意しました。

一日を長く柔軟に過ごす「夕」にまつわる諺7選

 

◆朝三暮四
(ちょうさんぼし)

中国のことわざです。猿を飼っていた宋の時代の狙公(そこう)という王が、食糧不足のため猿に与える餌を減らそうと企てたときの話です。猿たちに向かって「これから、餌(トチの実)は朝に三つ、夕方に四つになる」と言ったら、猿たちは落胆し怒り出しました。そこで「では、朝に四つ、夕方に三つにしよう」と言ったら、猿たちは大いに喜んだとのことです。このように口先で言いくるめて騙すことを「朝三暮四」と言うようになりました。そういえば消費税増税が延期になりました。ただ、物は考えようです。その間にやり繰りすることは出来ます。また身体の健康のためにも、朝四つ夕方三つの方がよろしいようです。でも、くれぐれもだまされないようにしましょう。

◆夕べに死すとも可なり

さまざまな解釈のなされてきた諺です。かつてはスパルタ教育者たちが学生に何としても知識を植え付けるために「これを覚えたら死んでもいいというくらいの気持ちで勉強しろ!」と言っていた時代もあったようです。中国の孔子の「論語」の中にある「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」という文からの引用になります。孔子という人物の志の高さ、あくなき求道心あってこそ生まれた諺と言えます。他説では、世の乱れを嘆いた挙句の言葉とも言われています。確かに「~これを達成できたら死んでもいい!」と強く思うこともあります。でも、死んでしまっては元も子もありません。何かを強く念じるとき、思うとき、祈るときに、このくらいの気持ちを持つということだけで十分な成果が得られます。

◆朝には冨児の門を叩き、暮には肥馬の塵に随う
(あしたにはふじのもんをたたき、ゆうべにはひばのちりにしたがう)

富児(ふじ)とはお金持ちの人のこと、肥馬(ひば)とは太った馬のこと、つまり朝にお金持ちの人の家の門を叩いて機嫌取りをして、夕方には肥った馬に乗っている権力者の後ろを埃(ほこり、ちり)を浴びながらでもお供をするという、どこまでも媚びへつらうことを言い表しています。そういえば「長いものには巻かれろ」という諺もあります。ひとつの処世術ではありますが、自分の培ってきたものがぶれない範囲で対処していきましょう。お金を食べることはできませんし、権力者はたまたま権力のある人に過ぎません。

◆出日拝む者はあっても入日拝む者はなし
(でひおがむものはあってもいりひおがむものはなし)

日の出を礼賛し拝む人はたくさん居ますが、夕陽に対して手を合わせて拝む人はそう多くはありません。でもなぜだか泣けてしまうものです。この諺の意味するところは、太陽を人に見立てて、勢いのある人には手を合わせてへつらうけれども、落ち目の人にへつらう人はいない、ということです。前述の諺と同じような意味の、現実そのものです。何を持って落ち目とするかは、人それぞれの感性で判断するのでしょう。落ち目とは呼ばれたくないし、相手の状況で態度を一変させるような軽々しさも考えものです。

◆秋の入日と年寄りはだんだん落ち目が早くなる

同じ意味を表す諺に「秋の日は釣瓶落とし」があります。秋の夕陽というのは、得も言われぬ美しさなのですが、沈みはじめるとあっという間に真っ暗になってしまいます。その日没の早さと、年齢を重ねるごとに老いの早くなる人間の健康状態をかけて表現した諺です。そうならないように、とアンチエイジングに努めるのもまた人間の健気な美しさです。

◆朝令暮改
(ちょうれいぼかい)

朝に決めたことを夕方には撤回して変更することを言います。朝改暮変(ちょうかいぼへん)、朝令夕変(ちょうれいゆうへん)とも言うこともあります。悪く言えば優柔不断の行き当たりばったりというところ、良く言えば臨機応変。その見極めは非常に難しいところですが、何がどう作用して、何が変わるかわからないのが世の中です。毎年のように起こる自然災害は、その最たるもの。何が起こるかわからないし、何かが起こるのが人生です。想定外などと言わずに、準備すべきは準備して、柔軟に生きましょう。

◆秋は夕暮れ

ご存知「春はあけぼの~」で始まる清少納言(966~1025)の「枕草子」の一節です。日本の四季のそれぞれのもっとも美しい時間帯を著しています。秋は夕暮れがもっとも美しい、陽の沈むときに山々が紅く染めあがり、近づいてきます。暮れゆく空を背景にカラスが山へ帰ります。ましてや雁の群れが遠くを飛んでいるところの美しさといったら比べるものはありません。陽が沈むと涼やかな風の音と虫の声が心地良く耳に届きます。視覚聴覚に訴える秋の美しさを詠んだ一節です。人生の入日もこのようにありたいものです。

Editor’s note

いかがでしたか?
枕草子の通りに夕方という時間は季節で言うと、やはり秋でしょう。やがて必ずやってくる夜と冬の前に抗うように輝きを放てる時間、あるいは季節でもあります。諺(ことわざ)のいくつかを常に胸に携えて、ときに指針とし、ときに反面教師として、麗しい夕方の時間を過ごせる一助となれたら幸いです。
以上、「 一日を長く柔軟に過ごす『夕』にまつわる諺7選 」でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。