樋口一葉が五千円札にふさわしい理由と経緯

樋口一葉 近影
なぜ五千円札肖像画人物に樋口一葉が選ばれたのか? 女性肖像画としては、樋口一葉が最もふさわしかった理由に深く迫っていきたいと思います。どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。

樋口一葉が五千円札にふさわしい理由と経緯

 

日本銀行券と政府紙幣

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紙幣には、日本銀行券と政府紙幣の二種類があります。樋口一葉の五千円札は日本銀行券で、福沢諭吉の一万円に準ずる大きな額のお札です。歴史を紐解くと、1881年(明治14年)に政府紙幣として神功皇后(じんぐうこうごう、成務40年~神功69年)が日本国史上初の紙幣肖像画として登場しています(政府紙幣についてはまたいずれ詳報します)。そういう観点から見れば、樋口一葉は2004年(平成16年)二枚目の女性紙幣肖像画に大抜擢されたわけで、大変な快挙と言えます。他国の紙幣を見れば一目瞭然なのですが、一般的に国家的英雄やその時折の支配者が紙幣に登場します。

「マンセー!、マンセー!!」と叫び猛る狂気に満ちた個人崇拝の独裁国家・北朝鮮では、建国の父とされる(自称)故金日成(きんにっせい=キム・イルソン)が当然、紙幣に描かれています。権力者になりやすい男性が自ずと紙幣に選ばれやすいのは、世界共通のセオリーなのです。外国人から見ると「樋口一葉がお札になるのが信じられない」と見る向きもあるようです。

 

スイスを例に、女性肖像画選出の理由を考える


雄大なアルプス連峰に抱かれ、観光立国でありながら経済も強い、世界最古の民主主義国家スイスにおける女性の立場をここで踏まえておきましょう。スイスで女性に参政権が与えられたのは、1971年(昭和46年)。さらに、憲法の下で男女同権が確定したのは、1981年(昭和56年)とごく最近の話なのです。なぜ、理想の『永世中立国』と世界中から平和国家のように認識されているスイスが、日本よりもずっと後塵を拝して男女間の民主化に多大な時間がかかったのか。その理由は、スイスという国に、保守的で父権が強い家庭、地域が多いからというだけでなく、「政治に関わるには、わが国(スイス)の女は未熟すぎる」という価値観が非常に強かったからです。実際、選挙権を与えられた昨今も、スイス女性の多くは選挙に関心が薄く、反面政界では、左翼系の女性政治家が目立って躍進し議席を獲得している状況です。
スイスで特定の女性が紙幣肖像画に選ばれるのは、ずっと先のことになるでしょう。肖像画に選ばれるというのは、このように大変なことなのです。

 

村山政権がフェミニストと結託、五千円札肖像画は「絶対女性に」


1999年(平成11年)、小沢一郎が仕掛けた「新生党」主導の連立内閣は、短期間で政権から陥落します。是が非でも与党に返り咲きたかった自民党は、社会党とさきがけ三党で連立を組み与党に戻ります。その代償として、自民は首相の座を社会党に明け渡し、ポストには村山富市なる左翼が就任、後に作家の野坂昭如が「日本は下衆(げす)な国になった」と報道番組でブチ切れるほどの数合わせ政権でした。
首相に就任した村山は、「男女共同参画社会基本法」を公布・施行しました。「男女の特性(性差)を前提とせずに男女平等の実現を目指し、ジェンダー(性差)からの解放(ジェンダーフリー)を志向する」男も女もない、人間があるだけ「だから学校に更衣室は要らない」、「SEXもじゃんじゃんやれ」など、滅茶苦茶な思想の持ち主たちが作った悪法は、子どもや国体を毀損していきます。2004年(平成16年)、フェミニストたちの機嫌を伺うように、五千円札肖像画は「絶対女性に」という雰囲気が関係筋で醸成されていきました。

 

偽造防止の観点から、紙幣の肖像画は男性の方がふさわしい


世界の紙幣事情を探ると、エリザベス女王陛下を採用し続けている英国やニュージーランドなど、英国連邦諸国や名画の女性をモチーフにするデンマークなどは極めて異例で、女性肖像画を起用している紙幣は全体の10パーセントにも満たない事実があります。原因は、2項目めで指摘したスイスの女性の地位とリンクしますが、国際的見地で女性は男性より地位が低い国が多いのです。さらにもう1つ、重要なポイントなのですが、一般的に女性の顔はしわが少なく、またひげ面であることなどまずないということが挙げられます。つまり、女性の顔の原画を作るとなった場合、彫刻刀で線を細かく掘るとしわができて老け顔になるので、輪郭だけで表現せざるを得ないというデメリットがあります。
逆説的に言うと、男性はしわが多く、ひげ面の英傑も多いので、細部にわたって彫刻技術を駆使することができます。そうすると、自ずと完成度の高い紙幣、偽造されにくい紙幣ができあがりやすいというメリットがあるのです。ともあれ、紙幣にする価値のある女性を抜擢する眼を持つことも、現代の男女平等の世の中でとても重要なスタンスです。

 

04年・女性枠『五千円札』をめぐって、誰の肖像画が良いかの攻防


2004年(平成16年)の紙幣肖像画刷新は、その2年前(平成14年)に対象が決定。日本銀行券初の女性肖像画である五千円札は、多くの歴史的人物候補が関係筋によって国民の知らぬところで選出され、対象が決まった後にマスコミ報道が行われました。勝利した樋口一葉以外には、誰の肖像画が上がったのか正確な事実はどこにも発表されていませんが、確実に候補に挙がったと見られる樋口一葉のライバルには誰がいたのか、ここで紹介しておきます。

  • 与謝野晶子(よさのあきこ) 1878年(明治11年)~1942年(昭和17年)歌人、作家、思想家
  • 津田梅子(つだうめこ) 1864年(元治元年)~1929年(昭和4年)明治時代の教育者、日本の女子教育の先駆者
  • 平塚らいてう(ひらつからいちょう) 1886年(明治19年)~1971年(昭和46年)思想家、評論家、作家、フェミニスト
  • 林芙美子(はやしふみこ) 1903年(明治36年)~1951年(昭和26年)小説家

 

最も新紙幣にふさわしいのは、森鴎外すら絶賛する樋口一葉その人である!


前項目で紹介した樋口一葉以外の肖像画候補と比較して、結果的に一葉で収まったことは、国民にとっても非常に良い結果だったように思われます。ライバルの皆さんもそれぞれ秀でた能力を持ち、女性の地位を向上させるために戦ってきた立派な人たちではあるものの、思想的に偏りがみられます。平塚らいてうに至っては、東洋に冠たる資本主義先進国家・日本とは真逆の『共産主義者』と言っても差し支えないほど左傾化した思想の持ち主であり、わが国を代表する紙幣肖像画に抜擢するには無理があるでしょう。
樋口一葉は、極貧生活の中、借金の踏み倒しを繰り返し、肝心の小説も「奇跡の14ヶ月」、要は栄光を浴した実働期間はたった一年二ヶ月程度の日々しかありませんでした。しかし、大文豪・森鴎外をして、「私は世間で樋口一葉崇拝者などと言われても、彼女の存在を大絶賛する以外にないのだ」と言わしめた筆力を持っていました。その文章に一度惹きつけられると、鳥肌ものの才能とセンスに我々も驚嘆せざるを得ません。

 

実は樋口一葉・新紙幣抜擢案は二回目だった!


作家・丸谷才一=1925年(大正14年)- 2012年(平成24年)が短いコラムの中で爆弾発言をしています。1985年(昭和60年)の紙幣改刷時、氏曰く「今度の新しい札は樋口一葉の肖像を入れる案が有力だったさうで、それが立消えになったのは、若死にしたから当たり前だけれど顔に皺がなかったせいだと聞いた」―(引用元「紙幣論」)。とどのつまり、樋口一葉を肖像画にしようとする動きは、フェミニストだのジェンダーフリーだの悪魔の思想をばら撒く男女共同参画に入れ込んでいる国賊とは別に、その人間性と実績が評価され検討された事実を暗に語っています。
貧乏でも自己の能力を信じて努力を重ね、時代を創る―。確かに一葉は作家として大天才というインセンティブはあったものの、父が若死してから女戸主として必死に生き、書き、血を吐き、前のめりに書けなくなるまで書いて夭折した。坂本龍馬しかり、土方歳三しかり、日本人の魂を打つ生き方をした人物に対して、我々は最大の敬意と賛辞を以て褒め称えざるをえません。

あとがき「樋口一葉様へ」

今でこそ完治可能な病気として、さほど医者も騒がない「肺結核」。しかしかつては現代の癌(がん)と同様、最も恐ろしい、死に至る病でした。極貧ゆえ美味しいものを食べれず、睡眠時間を削って、生きるために、家族を養うために戦い続けた24年間…本当にご苦労様でした。

 

あとがき

ここまでの長文をお読み下さり、ありがとうございます。

なぜ彼女が5000円札に選ばれたのか? その理由に少しでも共感して頂けたら幸いです。

以上、「樋口一葉が五千円札に相応しい理由と経緯」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。